昨日、amazon内ネットサーフィンしてレビューを読んだ後、購入してしまった本を書いた。

その際に、こういう時間取られたら買ってしまうというのって、営業の手法でよく営業本に書かれてたよなあ、と思って、積読本を探ってたらそれっぽい本があった。


つーわけで『営業と詐欺のあいだ』を読んだ。
営業と詐欺のあいだ (幻冬舎新書)営業と詐欺のあいだ (幻冬舎新書)
坂口 孝則

幻冬舎 2008-09
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営業技術と詐欺手法は似ている。もろもろの手法を教えよう・・・という本。
『会社が黒字になるしくみ』を読んだ時に著者が『そこで私が描いたのは悪徳商法や詐欺まがいの商売から、いかに自分の身を守るかということでした。
しかし、残念ながら、オカルティック、あるいはスピリチュアルな本の売れ行きに届くことはありません。
おそらく、人間は「洗脳を解いてほしいから本を買う」のではなく、「洗脳されたいから本を買う」のですね。私にとっては考えさせられる経験でした。(P207)』と悲しいことを書いていたので、買っていたのを思い出しました。
売れそうなタイトルだと思いましたが、売れなかったんですかね。



eigyou

世の中には「お金を奪われる人」と「お金を奪う人」の2種類がいる。騙されないためにはその手法を知ることが大事という本書。
お金を奪われるのは詐欺だけではなく、営業も変わりません。その意味でお金を奪うというのも別に悪い意味だけではありません。
営業と詐欺のあいだ。著者の結論はあっさりしています。
営業と詐欺のあいだに境界線を引くものは、青臭い言い方をお許しいただければ、それは結局のところ「社会をより良くしたい」という意思のうむではないでしょうか。(P209)
結局は受け手がどう思うか、受け手がどういう結果を受けるかです。その意味でも営業&詐欺師の手法を知らねばなりません。


一流のセールスマンが伝える三つのこと
1、「メリット」
2、「信頼」
3、「価格」
一流のセールスマンは必ず買い手のメリットをいやになるほど強調してくれます。商品のすごさを説明することすらほとんどありません。ここに絶望的な差があります。
もしお客のメリットが分からない場合はどうするかって?
簡単です。お客に訊くのです。(略)
「最近、何かお困りではないでしょうか?」(P31)
いかにその買い手を輝かすか、また商品の希少価値を伝え、買わないと買い手がいかに損をするかを伝えてきます。
それに立ち向かうには伝えている人を信じるだけではなく、商品と価格をじっくりと吟味することを忘れないようにということです。


人間の習性3つ
1、自分にしか興味がない
2、そのくせに自分のことが分からない
3、どこか幸せじゃない
悩みや欲望、言われて嬉しい言葉は多くの人に似通っています。その類似性を詐欺師は使ってきます。
自分のことを言いあてようとしている人がいるときには、「それってみんなに当てはまるんじゃない?」というクールな視点を持っておきたいものです。(P69)
定年退職者が「死ぬまでに自伝を書き上げたい」「私の経験は、人々に伝える価値がある」という話はおもしろかった。ほとんどの場合はありふれた内容が書いてあるそうです。みんな自分が特別だと思いながら、似通った人生を送っているということでしょう。
相場を当てるというテクニックも紹介されています。
これは一昔前に競馬をやっている時にもよく聞いたテクニックですが、
最初8人に電話をかけて、4人に上げ基調、4人に下げ基調と予想伝える→当たった方を2人と2人に分けて・・と繰り返せば3回連続で当たる人が1人は出る、という仕組み。これを母数をひろげてやると、バカがいっぱいひっかかるということです。
騙されないようにしないといけません。


詐欺に騙されないために知っておくこと
成功法則を売っている成功者は、成功法則を売ることによって成功している、という事実を忘れない方がよいでしょう。(P106)
悪質商法の買わせるテクニックの中で最も有効なのは、「なぜ買わないのですか?」とひたすら訊くことだと言います。「なぜ買わないのですか?」「今、持ち合わせのお金がないからです」「それが理由であれば、料金は後払いで結構です」とか(P141)
「ネズミ講は上手くいくはずがない」と常識で考えれば分かります。一人が5人を会員にしたと仮定しましょう。そして、その5人もそれぞれ5人を会員にしていくと・・・。12階層目には、日本の総人口を突破してしまいます。(P147)
みなさんがこのようなビジネスに出遭ったときに思い出すべき原則をお伝えしておきます。それは、もう一度常識に立ち戻って考えるということと、
「ビジネスでは、その仕組みを作った人以上に儲けることはできない」
と思い出すことです。(P150)
特定商取引法で、売り手たちに「勧誘開始前に、事業者名、勧誘目的である旨などを消費者に告げること」を義務付けているということは絶対に覚えておきたいところです。


まとめ

本書の柱は

落ち着いて常識的に考えよう

ということに尽きるかと。
ちょっとノセられると、胴元・仕組みを作った人以上には儲けられないということすら忘れてしまいます。
与沢翼さんの本を読んでからというもの、いろいろとネットビジネスを薦めるサイトを見ましたが、気持ち悪いものばかりです。なぜそんなに儲かるのに不特定多数に薦めるの?バカなの?で終わってしまう話がほとんどです。
まあ、もちろん買い手が納得していれば何の問題もありません。
本書にはウェブ販売についても記述があります。
多くの実績データが示すものは、その印象とは逆に「説明文は長いほど売れる」というものです。それは、おそらく読者が一定量以上のものを読まないと商品に納得できないという理由に加え、それだけの文章を読んだ時間を無駄にしたくないという気持ちが生じてしまうからです。(P103)
というのがありました。
まさにレビューを読み続けていて勿体ないと思い購入してしまった、という私もまんまとといったところでしょうか。
ただ、「夢を持って働くこと」と「低賃金に甘えること」はイコールではない、と思います。「あれか、これか」ではなく、「あれも、これも」という選択だってあるはずです。最近、どうも「夢を持たない人よりも、持っている人のほうが優れている」「普通の仕事をするよりも、低賃金でもやりたい仕事をやったほうがよい」という言説ばかりが宗教のように流布しているように、私には感じられます。(P181)
というのも非常に興味深いところ。

騙されたくない人だけでなく、騙したい?人にも参考になるかと思います。詐欺&営業に興味のあるすべての人におススメです。

個人的に参考になったのは、手書きの威力を説く中であった以下の箇所。
今日からペン字練習はじめることに決定(笑)
私は英会話やヘンな資格を勉強するくらいならば、ボールペン字を薦めています。(P114)
営業と詐欺のあいだ (幻冬舎新書)
営業と詐欺のあいだ (幻冬舎新書)坂口 孝則

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本書より

一流のセールスマンは必ず買い手のメリットをいやになるほど強調してくれます。商品のすごさを説明することすらほとんどありません。ここに絶望的な差があります。
もしお客のメリットが分からない場合はどうするかって?
簡単です。お客に訊くのです。(略)
「最近、何かお困りではないでしょうか?」(P31)

本当に理解していることではなく、買い手が「このセールスマンは自分のことを理解してくれているな」と思い込めばよい、ということです。たとえ、まったく理解していなくても、買い手にそう思わせればよいということは強調しておきましょう。(P37)

「価格の話になれば、セールスマンは勝っている」
価格交渉に入ってしまえば、もう買い手は「いかに買うか」しか興味がなくなり、「そもそもこの商品を買うべきか」ということについてはなかなか意識しなくなります。(略)
誰かを信じて商品を購入するということは非常に素晴らしい行為です。でも、購入しようとしている商品と価格をじっくり吟味することも忘れないようにしたいものです。(P57)

褒め殺しで人は財布を開く(P84)

ネット上で売る場合にまず定石とされている手法
1写真で人目を惹きつける
2リード文で興味を持たせる
3無償サンプルで相手をはなさない

マインドコントロール
数年前に、野心的なビジネスマンたちとビジネスの勉強会を開催していたことがあります。あるとき、「どういう商売が儲かるか」というテーマを連続して議論したところ、そこで出た結論は、「手段を選ばないのであれば、金儲けほど簡単なものはない」「最も儲かるのは、カルト宗教ビジネスである」という二つでした。(P160)
「自己啓発セミナー」という名前だったり、新興宗教だったりと、その形はさまざまです。(P160)

彼は「愉しいから不満はないよ。お金のためだけに働いていないから」と言いました。その顔が強がりではなく、心から言っているように思えたので、私はどこか複雑な思いにとらわれたのです。(P180)

私は、セールスマンが悪意をもって買い手の財布を開かせているのではないか、という調子で書いたところもありました。しかし、実際はもっと複雑です。というのも、少なからぬセールスマンが心の底から、「自分が売っているものは素晴らしい商品だから、それを分かってほしい」と思って、その純粋な善意からセールステクニックを繰り出しているのです。(P187)