18歳の時予備校に通っていた。

サテライト授業という映像の授業を受けていて、
予備校どんだけ儲けるんだよ!と憤っていたのを覚えている。

通い始める前に「予備校意味ないからその授業料を俺に直接くれ」という親へのバカな提案は通ることがあるはずもなく、
好きな講師2名の授業以外は出席せずに毎日、昼夜問わず映画を観るか本を読むかの生活をしていた。
予備校なんて意味ないね、で終わる俺はちっさい奴だなと思う本のタイトルを見かけたので買ってみた。

つーわけで『予備校なんてぶっ潰そうぜ』を読んだ。
予備校なんてぶっ潰そうぜ。予備校なんてぶっ潰そうぜ。
花房 孟胤

集英社 2014-04-25
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大学受験生を対象にした授業動画を無料公開しているmanaveeを超短期間で作りあげた花房氏による、設立から現在のmanaveeができるまでを紹介する・・・という本。

はいりがとにかく面白い。久々に寝食忘れそうと思ったのだが・・・。



yobikou

『全受験生に公平な勉強の機会を。
地理的な、経済的な環境の差を飛び越える手段として無料サイトを思いついた。』
うわー、でた!意識高い学生というやつや・・、何事も斜に構えるダメ人間の私としてはもう最初のこのあたりで本来なら黙って本を閉じるところですが、この著者は最初にその違和感を自ら語ります。
キョウイクが、コドモタチが、そんなことを言っている連中は偽善的だし、もっと世の中には解決すべき問題がいっぱいある。ボランティア団体なんて作っても世の中何も変わらないのに、何をそんなに一生懸命にやっているのだろう。かっこ悪い。当時の僕なら言ったであろう、軽蔑の文句がどこからともなく聞こえてくる気がする。(P4)
「はじめに」から惹き込まれます。読み手に不快感をあたえない立ち位置からの強烈にうまい文章、たまりません。
すごく魅力的な文章でどんどんのめりこんでしまいます。

ただ、半分をすぎたあたりから急速に飽きてしまいます。それは、ひとえに私が高学歴でもなく、いわゆる意識高い学生でなかったからなのでしょうが、文中にあるエピソードがどうにも薄すぎることがあるように思います。
やることが決まっている男のかっこよさや、やりたいことを学ぶという重要性や、筆者の優秀さはすごく伝わります。
なのに、なんというか圧倒的に熱量が少ないというか、熱さがないといいますか、著者以外の登場人物の魅力が全く伝わらないといいますか・・。
それは偏に金銭が発生していないということにある気がしてなりません。もちろんその熱のなさ、周りとの温度差の違いに苦悩する筆者が著されていると言えばそれまでなのですが、ノンフィクションとしては著者自身の熱とそれにひっぱられる周囲の人の熱、その熱さが読者をひきつけるか否かの肝だと思っている身としてはちょっと物足りない印象を受けました。
まあ、私みたいな世代を読者対象にしているのではなく、著者が想定しているのはもっと下の世代の意識高い組の人たちだと思われますので、その世代にはたまらない書籍に仕上がっているとは思います。特に自分で何かやりたいと思っている学生にはすごく参考になると思います。


まとめ

本書の目的が、manaveeを設立・運営する俺の苦悩を書くからなんか感じてね、というものではなく、manavee自体の宣伝もしくは日本の教育に喝を入れるということであれば、目的は充分に達成できているものに仕上がっていると思います。
manaveeの魅力はすごく伝わってきました。
また著者の魅力もです。
スポンジが黒ずんだら、よく水を吸う新しいスポンジと入れ替えるのは、ごく当然のことだ。だから僕は、同じ場所に居続けることはできない。
このマナビーという仕組みを、本当に「百年の大計」で考えているならば、僕は創業者としてガンになる前に、このポジションを確立して明け渡さなければならない。(P251)
かっこよすぎです。

就職前の人におススメです。

manaveeを見ましたが、すっごくおもしろいです。
自分が受験生の時にあったら、がっつりはまっていたかもしれないほどに。
その時はその時で、無償で授業撮る学生なんてどうせ自分に自信がありすぎる気持ち悪いやつらだろ・・と毛嫌いしていたかもしれませんが(笑)
ここのページで本書の1、2章が載っているようです。著者の文章にハマる人いると思います。
予備校なんてぶっ潰そうぜ。
予備校なんてぶっ潰そうぜ。花房 孟胤

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本書より

「一緒に東進をぶっ潰そうぜ」
著者が東大で仲間を探している時に使っていた決めフレーズ。

当時のメールのやりとりに残っていた議事録には、どうすれば収益化できるかについての提案が並んでいた。始めて4ヵ月くらいであったが、当時から一番問題視されていたのはマネタイズについてだった。あの手この手でお金に結びつかないか知恵を絞った軌跡がうかがえる。ただ、素人の授業が100本集まった程度のウェブサイトでは、何もできないことは分かっていた。(P42)

物事をややこしくしているのは、「カリスマ講師」というブランドが、実のところ「生徒」ではなくて、財布を握っている「生徒の保護者」に向けられているからだ。絶大な師事を誇るカリスマという存在は、保護者にとっては無条件の安心であり、子供に対する責任の免罪符だ。(P77)

現在の教育産業は、子供のためにあるのではなくて、保護者のためにあるのだ。
マナビーは結果的に、その構造に挑戦するには好都合な仕組みになっていた。生徒に対しては完全無料を貫くことで、保護者の財布をすり抜けて直接教育を受ける高校生に等ことができるし、先生を雇用せずにボランティアワークで参加してもらうと決めたことで、人件費がはっせいしないため、なるべく多くの先生を巻き込んで授業の多様性を高めることができる。(P78)

「まあ見返りとかは、今はどうでもいいと思うんだ。もし成功したら、例えば1000万でも返してくれたらいいよ」
それを聞いて、僕はなんとなく違うな、と思った。人がわざわざ言葉をたぐり寄せて表現するのは、通常、言いたいことか言いたくないことの裏返しだ。あえて見返りについて言及した彼の意識の向こう側に、本音が透けて見えた。(P113)