日本の子どもの相対的貧困率は現在15.7%。

『チャイルド・プア』 を読んでから、日本の貧困に非常に興味を持った。
貧困にというより、児童の貧困に興味を持った。
大人が貧困だと言われても、自分のことは自分で何とかしろよ、知ったこっちゃない、と思っていたけれど、結局児童の貧困が大人の貧困につながって、その子供がまた貧困になるというどうにもならない連鎖。

自分に何ができるかということは特に思いつかないし、というよりむしろ今の俺は大きく分けると貧困側にいるわけだろうし、まず自分の生活をなんとかしろっていうわけなんだけれど、まず知っておきたいと思った。

なんにせよ、子どもが自殺する社会、子どもが虐待される社会、満足に教育を受けられない社会は絶対に間違っている。

つーわけで『隠された貧困』を読んだ。
隠された貧困 (扶桑社新書)
隠された貧困 (扶桑社新書)大山 典宏

扶桑社 2014-07-02
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生活保護を受けている人たちの現状を伝えよう・・・という本。



seikatsuhogo
生活保護110番−生活に不安を感じている方に気軽に相談できる場所を提供します−
貧困問題のプロフェッショナルである著者が、メディアが伝えるわかりやすい生活困窮者ではなく、もっと現場に近い生々しい声を集めたという本書。児童養護施設出身者、高齢犯罪者、薬物依存者、外国人貧困者、ホームレス・孤立高齢者それぞれにインタビューし、現状を伝え生活保護を考えさせられます。

バブル崩壊後、貧困が拡大し続け、生活困窮者が増加し続けています。そして生活保護の利用者も右肩上がりに激増しています。
特に、最近の傾向としてたびたび取り上げられるのが、高齢者でも、母子家庭でも、病気や障害でもない、「その他世帯」と呼ばれる、働くことができる若い生活保護利用者の急増です。(P216)
すごくもやもや。

読後思うことは一つ。
何がどう変わったら現状が変わるのだろうということ。

本当に苦しくて、生活保護を受ける人がいる一方、働く意欲のない受給者もいる。本当に保護の対象なのかといった外国人貧困者に制度を悪用する日本人、生活できないから保護を受けたけれど、受けたらうけたで働かなくなってしまう人、本書を読むと生活保護に対する怒りも湧いてきます。もちろん本書に登場する人たちは、生活保護は早く切るべきだという考えの人がほとんどですが、その人たちが働かなくなってしまう怖さを語るのです。
芸能人の生活保護利用が話題になって2013年12月に大きな法改正が行われたということですので、今後は変わっていくのかもしれませんが、どう考えても本当に必要としている人に適当な分のみ支給するというのは難しいでしょう。

それに現場で支援する人たちの大変さ。精神的にも肉体的にも大変すぎます。
ただ、かといって児童養護施設出身者、之井犯罪者、薬物依存者・・を支援する職に就く人が増えるはずもありません。金銭的にも報われないし、過酷な労働状況。どうなればいいんでしょうか。

まとめ

本書の柱は

まず、貧困者を見ろ、知ってくれ!

というものと読みました。
序文で
社会の中でマイノリティとされ、「なかったこと」にされる人たちがいます。
経済的に苦しい状態にありながら、声を出せない人たち。その姿は人々の目に触れないよう、巧妙に隠されています。(P4)
とあり、最終章で
人は、見たくないものを、「見なかったことにする」という特技を持っています。親からの支援を受けられずに、自暴自棄になって夜の仕事に走る児童養護施設出身者。いじめをきっかけに薬物に手を出す依存症者。経済的困窮から万引きを繰り返す高齢者。こうした人たちの存在は、人を憂鬱な気分にさせます。本人だけに責任がある訳ではない。社会の矛盾ともいうべき課題があるのも、なんとなく想像できる。でも、それが今日明日にどうなる訳でもないから、私が考えてもどうしようもないから、だから、目をそらして、「なかったこと」「聞かなかったこと」にする。
そうした反応が想像できるから、当事者も口をつぐみ、苦しくても話さない。(P223)
とあります。
これらの反応が決して間違っているわけではなく、むしろ当然かもしれませんが、知らないことで誤解や偏見だけが広がっていってはたまったものではありません。
まず知ること、きちんと見ることから始める必要があるのでしょう。
著者は、最終章「生活保護から見えるもの」で生活保護は「炭坑のカナリア」だといい、生活保護に矛盾が集中している現状から危機が迫っていることに気づくべきということを説いています。承認が人が人として生きていくために必要であるという話もあり、とても密度の濃い章になっています。
最終章だけ読んでも、多くのことを感じ、知ることができる書籍です。

今、いわゆる普通に生活できていると思っている全ての人におススメです。

児童養護施設出身者の章で、自立援助ホームのホーム長の言葉が素敵です。
生活保護は最終手段だといい、生活保護に甘えてしまっている子どもに対してどうしたらいいのかわからないという気持ちがあるなどと語っている人が最後、
「ただ、生きていてくれればいい。ホームレスでも、生活保護を受けていてもいい。社会的な参加をしなくてもいい。私はそう思うんです。
こうした思いは、自立援助ホームで働く職員すべてが持っていて欲しいと思いますね(P58)」


本書より

保護者がいなかったり、虐待を受けるなどして児童相談所が介入し、施設などに保護された子どもは約四万七千人にのぼります。(P37)

児童養護施設にいる子どもたちのうち、四人に一人(二三.四%)は障害があります。身体障碍のような誰がみてもわかる障害ではなく、知的障害や発達障害が大半を占めます。(P38)

じつは、高齢者による犯罪の大半は、万引きや無銭飲食、無賃乗車、放置自転車の無断使用といった軽微な犯罪で占められています。こうした罪でも、何度も繰り返したり、逮捕時に身元保証人がなく、安定した住まいもなかったりすれば、実刑判決を受けることもあります。(P79)