簿記検定がこれだけメジャーな意味がわからない。
仕訳だったり、財務諸表作成だったりっていうのを日常業務で使っている人ってかなり少ないように思うし、簿記検定を取ったとしても、2、3級あたりでは財務諸表を読む力はそんなにつかないように感じる。
受験者数が多い割には、検定用の参考書を見てみるとすぐに仕訳の説明に入っていて、ひとまずやってみろ方式だったりするし、序盤で嫌になる人が多いのも当然だろうと思う。
きっと、序盤の結構長めのただなんとなく仕訳している期間を過ぎたらおもしろくなるんだろうけれど、財務諸表を作ることなんてなかなかないわけで、該当部署以外の社会人がそこまで頑張る必要がない。

個人的には財務諸表を読む力の方が重要視されるのが普通なのでは?と思ってしまうんだが、そうでもないのだろうか。

とにかく、財務諸表・簿記の理屈を説明してくれている本を読んでみようと思った。

つーわけで『世界のエリートがやっている会計の新しい教科書』を読んだ。
世界のエリートがやっている 会計の新しい教科書世界のエリートがやっている 会計の新しい教科書
吉成 英紀

日本経済新聞出版社 2014-08-21
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優秀な日本のビジネスマンが会計が苦手なのは、世界的にみて日本の会計教育が遅れているからである。きちっと論理的に教えよう・・・という本。



電卓_1

初心者が会計入門書でつまずく8つのポイント

1、簿記や会計の本を読もうとすると、1ページ目からなぜかいやになる。
2、資産と負債はイメージがわくが、資本というのが、どうもよく分からない。
3、収益と費用については日常の仕事でなじみがあるが、資産と負債はよくわからない。
4、簿記の勉強をした時に、「なぜそうなるか」の説明がないので途中で分からなくなった。
5、B/SとP/Lのつながりがよく分からない。
6、仕訳をする時に、減ったら逆に書くというのがなぜか分からず、いやになった。
7、収益と費用の仕訳で、自分で何をしているかがよく分からなくなった。
8、いつまで経っても、自分が会計の基本が分かっていないように感じる。

本書では、初心者がつまずくポイントとして、上記8つがあげられており、『本書を一番読んでいただきたいのは、かつて会計を勉強したが挫折した、というビジネスマンの方々です。入門書を途中であきらめた人も含まれます。』とされています。

読みましたが、間違いなく全くの初心者が読むには向いていない本だと思います。
図が満載の会計本を数冊読んでみる→会計が何となくおもしろそうだと思う→会計といえば簿記なのかなと思って簿記検定の参考書を買ってみる→読んで説明のなさに絶望する→日常業務で使わないから簿記はいらないな→財務諸表の説明ある書籍読んでみたいな
という私がたどった順と同じような順をたどった挫折組の人には最適な書籍になっていると思います。

目からうろこ、とまではいいませんが、そこの説明欲しかったんだよね、というところがきちんと説明されている印象です。


日本の会計教育は遅れている

本書では、日本における会計の教え方に問題があり、大人が物事を理解するために不可欠な「定義」と「論理」の説明が欠けていることが大きな問題であるとしています。
海外ではとっくに「習うより慣れよ」方式ではなく「論理を積み上げる」やり方で、大人がわかる教え方をしているということです。
それが「B/Sアプローチ」という手法で、その手法をもって本書では説明がなされています。


B/Sアプローチとは

B/Sアプローチというだけあって、B/S、P/Lを同列に学ぶのではなく、まず貸借対照表をしっかり理解しようという学習法です。
B/Sの一部の明細記録としてP/Lが存在する、という説明の流れになります。(P18)

また、個人的に非常にわかりやすかったのは、他書と違い、言葉の定義が示されていることです。
たとえば、貸借対照表の説明に入る前に、
『資産とは、会社が実質的に所有する、価値を有するものである。
負債とは、会社が将来、資産を支払わねばならない、支払義務である。
資本とは、資産と負債の差額である。(P20)』とあり、そこから資産、負債、資本の説明に入っていくという流れです。他書であれば、この後にすぐに流動資産、固定資産の項目の説明に入っているものが多いように思いますが、本書はその定義をしっかり理解させるための説明がしっかりとなされています。

この定義の説明がしっかりとしているため、"資産と負債の差額が資本である"”資本を増やす理由は2つしかない”ということがしっかり理解できます。
繰り返し、資本は差額である。資本は実在しないものという説明があり、「これまで勉強してきて貸借対照表の純資産がよくわからんかったんだよねー」という悩みがふっとびます。

他書で”B/Sは会社の財政状態を示すものです。”で終わっているところを、本書では”B/Sは会社の財政状態を示すとはどういうことか?"と項目を作って説明してくれています。
すべてにおいてそういう調子なので、本当にすっきりさせてくれます。
BSアプローチならは、
1、実在する「資産」「負債」をまず実感をもって理解する。
2、「資本」は、その資産と負債の差額であると理解する。
3、続いて「収益」「費用」というものは、資本の一部の明細記録であると理解する。(P103)


まとめ

本書の柱は

財務諸表がわからないとは言わせないよ!

というものです。
挫折組の人は上記にあるつまずく8つのポイントのどれかには引っかかるのではないでしょうか。
その部分はすべてきちっと説明されており、実践編として実際のB/S、P/Lの読解と分析方法も載っています。
実際に財務諸表分析をがっつりやっていく必要があるのであれば、読解&分析は別の書物でもいいかなという気もしますが、入門編の説明部分は必読です。言葉の定義がきっちりとわかるだけで、これだけ多くのことが理解できるのかという衝撃を味わえます。

会計挫折組したことがあるすべての人におススメです。
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本書より

借入金とは何ですか?と聞かれて、「借りてきたお金です」と説明する人がいます。感覚的には分かるのですが、会計の説明としては間違いです。「お金がある」といったら、それはお金なんです。お金は現金であり、資産です。あくまで借入金というのは、貸してくれた人に対する「支払義務」を指します。混同しないようにしてくださいね。(P24)

貸借対照表の資本のところには、資本金とか利益剰余金とかいろいろ書かれていますが、これは実在する何か、ではなく、資産と負債の差額がなぜ生まれたかの説明書きにすぎないのです。
実在しないということをはっきりさせないから、よく分からないんです。(P29)

実は会計実務の世界では、不正やミスの防止のため、消しゴムで消すような行為は昔から認められていません。(P89)